塩谷泰一先生講演会
ひさーびさにかいてみます。
昨日は、医療制度研究会に出かけてきた。尊敬する、塩谷泰一先生の講演会があったからだ。ノートをとったので、ここに記してみる。
----------
050129塩谷泰一先生(第31回医療制度研究会講演会)
招いた経緯:院長になったとき、どうしていいか分からない
そのときに、組織の引っ張り方を学んだ
2005年坂出市立病院退職(現在名誉院長)
→徳島県 県立病院統括管理担当理事
5つの病院を統括している
(先生のお話)
H3.9、着任した日に言われたこと
累積欠損金25億円
不良債務25億円
50億の赤字病院!!!
収入20億円…
第二位を100%以上引き離していた..。
「これ以上悪くならんだろう」と高をくくっていたら、
一週間たったら、病院廃止勧告
→市議会大騒ぎ
しかし、責任追及するだけで前に進まない議会
建設的な意見なし!
マスコミ45分の特集番組
体たらくをかくだけ
読者うけをする記事を、言ったことの一割以下を書くだけ
(定期昇給ストップしても500万円しかとまらないのに)
「なんでおちぶれたのか」
知的作業の欠如!!
医療の本質は、知的知識労働者
なのに、「失敗を教訓にしていかす作業の欠如!!」
それが、病院の本質
二つの質問を職員にした
・5年10年 して、安かろう悪かろうの医療
「謙虚に反省」
「積極的な意見」
の二つを求めた
→責任転嫁しか出てこなかった
どうどうめぐり
自分たちの反省ナシ!!
「私立病院に入院すると殺されるという噂がある」と反省に書かれていた..
落ちぶれるところまで落ちぶれていた
ロイヤリティなし!→つくるぞ!という決意を自分でもった
五つの問題
・基本理念ナシ …どこいきゃいいかわからない
・達成可能な目標ナシ
…「赤字だ」「がんばれ!」と騒ぐだけだった以前
・品質管理システムナシ
…「医療という製品」企業とまったく一緒
企業ならば、どこまで品質管理をがんばるか
管理できなきゃ潰れる! 社運を左右する!
なのに、どう、なにに、対処するのかまるで分かっていない
・組織としての一体感ナシ
…てんでばらばら
「医学的に正しい医療をしていれば非難されることナシ」と開き直る医師
背景を理解しない医療はだめ
社会的に医療を行う責任がある!
事務は、医療者以上に医療をしらなきゃ、現場に足を運ばなきゃ、ダメ!
・自己責任ナシ
…責任転嫁
地域社会や組織にいかに責任を果たせているのかという現代
なのに、「日常性に埋没」
権利を主張しやってあたりまえのことをしない労働組合
↓
<やったこと>
それまでを、全面否定
喜んでもらえる医療の世界があるのだ、とおしえることから始まった
そのころ、東大老年がいっていた理論
「寝たきり老人」
病院職員、「寝たきり職員」であった。退化する一方
からだ、こころを、どう変えていくのか
「意識改革!」
…さけばれても、なかなかできない
本質を見極めるポテンシャルがなければ、できない!!
意識改革は、意識があるやつにするのが大前提
きちんと救命救急しないと、「意識覚醒」しない
どうやったらクリアする?
・知っている、わかっているをクリアする
なんのために、医療者になった?
なんのために、そこにいる?
つぎに
・できる ←まずここに入ろうとしても、ムリ
リストラ、
けちけちすることで組織を維持しようとする方法
しかし、それは絶望しか生まない
「根本からみなおし、できるようになれ!」とアジった
しかし、リエンジニアリング(なんとかがんばってできる)では、
topを追い越せない
「やって当たり前を当たり前にできるようになろう」
それを越えて、自己更新、イノベーション起こせる
→なんのため? <<住民のため>>
アイデンティティを持っている組織は強い
「月に一回でいいから、仕事を通して感動しようぜ」
感動 ←自ら学んで獲得するもの!(与えられるものではない!)
生きがいを感じるのは、院長だけの責任ではない
職員すべてが参画してつくるもの
…言い続けた
生きがいを実感するために 3つのstep
1.やりたい仕事をやる
やりたい仕事がないやつに、議論する資格はない
2.やりたくない仕事でも一生懸命やる
3.やりたくない仕事をやりたい仕事に変換する能力を手に入れる
これをみんなでやる
◆塔を立てて道をつくる
・塔ははっきりとみえる
・いける
・だれでも美しいとおもう病院
道は曲がりくねっているほうがいい
道は複数あるほうがいい
みんなで、あるいた。
その基本が、「理念」
理念なんかなくったって、医療はできる、と言った医者
「理念なくしてなんの組織か!」と反論した
自分の職種、自分にとっての理念を答えられるか
ずっと問いかけた
「すべての職員の共通の価値観であり行動指針」
あらゆる仕事は理念の実現のためにある
◆QC活動
…掃除のおばちゃんも参加
部会活動
…脱落者がでた
行事チーム
…おまえは一年間忘年会のことだけかんがえとりゃええんだ
→その土台があるから、プロジェクトが動く
みんなで動くから、和む
自分の専門性を守るから、セクショナリズム
しかし、掃除といった、専門性から離れることで、コミュニケーションできる
「全員参加」
参加したひとはみんな評価した
H15年、830回のイベント
…委託職員
イベントは、時間外にやる
しかし、時間外給料は出さない
それでも、やる職員
いろんな生活をしている職員を、いかにまとめて一体感をだすか。
「委託職員が年に14回の落ち込む日」
なかなか理解しなかった職員
となりのひとと同じ仕事をしていても、給料安い…
その落ち込みをいかにクリアするか!
病院のアイデンティティは院長
前近代的だという非難はあるが、
感情エネルギーで閉塞感をクリアしないと
組織文化を創れ
病院は職員の力以上に強くなれない!!
<心の共鳴現象>
遠心力(ひと! 広がっていく)
& 求心力(理念!)
↑ひと、では人がいなくなったら潰れる!
◆病院医療はどこへ行くのか
それ以前に、自分がどこにいるのか知っている職員がいるのか
ひとりひとりが、答えられるのか…
わけの分からない医療改革
厳しい倫理観を求める市民
何をよりどころに医療をしていったらいいのか
→時代がわれわれに何を求めているのかを、認識すること!
「質・透明性・効率性」
これに、日々の仕事でどう答えていくのか
日々の仕事を時代の要請にこたえられるシステムを、どう作るのか。
そこが勝負!
高品質と低コスト
旧態依然としていては、不可能!
どう、変えていくのか
→病院情報システム
ITを使って、クリアする
定価5億円のシステムを、1億円で入れた
坂出市立病院という名前を、4億円でかった
「奇跡的な回復を遂げた坂出が、メーカーでなくベンチャーを買ってくれた」
結果、ベンチャーは、中規模病院では日本一になった
何をクリアしたのか
なぜクリアできたのか 10数年にわたるどぶ掃除があった…
サーベイランスをIT化し、非常にスムーズにやれるようになった
例:抗生物質使用規制をかけた 電子カルテで規制かけた
→結果!
半分以下に使用量が減った
規制かけなかった他の薬も1/4に減った
薬価差益がへったとはいえ、そこまで減ると、痛手。
しかし、ひるまず、進めた
例:患者の必要カロリーをだれでも出せるようになった
NSTメンバーいなくても大丈夫なように!
だけでなく、栄養士が、一品ごと、栄養素別カロリーを出せるように
職員が、作った。まったくの、無料!
→COPDは、あまりに炭水化物にたよっていることが分かった
オヤツで補充
今の診療報酬ではまったくの持ち出しになる
が、500カロリー増えた、2000カロリーを摂取してくれるように
炭水化物の割合も減った
退院する日にち、減った。
◆患者さんようカルテ
電子カルテ入ったからこそできた
診療録つけて、説明つけて、患者が保管。
「究極の情報開示」
実費700円かかるが、無料で差し上げている
診療報酬が入ってこないものにこそ、生きがいを感じる病院
厚生労働省の後追いをやる病院
精神的安定ナシ
二階に上げて、はしごはずされる
→「厚生労働省が後追いをする医療を行え」
◆ジョブレビュー
医師のみが移るように記録
密室を作らない
あとでみんなでみる
チェックリストで採点
医者と患者の時間を計ることで、診療がすべて分かる
◆電子化して、
時間外労働が、5200時間減った
年1500万円へった!
けちけち作戦ではない
ITが、情報の共有に終わっている
それは、入り口
結合させ、体系化し、知識にする
それを<<行動>>に変えるべき
そして、病院の知能指数を上げる
心の知能指数EQを。
無機質的なITだからこそ、
結果は有機的に
「サッカーである医療」野球ではない
なぜか。
専門性がある。
しかし、チームがピンチになったら、自分たちの専門を越える
自らの専門性は当然発揮しつつ、「スペースを埋める」
チームの勝利のために
患者さんの喜びのために!
◆島への巡回診療。すべての医師(産婦人科以外)いく
在宅
祭り(地域の一部になるために)
●医療制度改革の視点
「医療はコスト」
安全性や満足度など無視して、コストカットしかない
「医療はサービス」
財布から余分にカネをだして、買ってくれるかどうか!
価値創造
アメニティとかそんなものでは、ない。
なぜ女性がブランドバッグを買うのか
●「病院のブランド」それが勝負!
<住民の価値>
●「開設者が大切に思っているかどうか」
<開設者価値>
●「職員が大切に思ってくれているかどうか」
本当に心から大切に思っているかどうか
<職員価値>
価値の創造!!
いかに患者にロイヤリティをもってもらえるか
職員も持たなければ。自分自身に対して。
「こうなりたいという初心があったでしょう」
税が投入されている自治体病院の医療
税を払いながらの民間医療
どこがどう違うのか!!
「そこまでやっているのであれば赤字であれば結構ですよ」
と言ってもらえるのかどうか
黒字化の二つの方法
分母型:赤字を削る
分子型:黒字を大きく ←こっちが活力圧倒的にアル
見えないものを見る力がなければこっちは無理
変化の予見・先見性・創造力
自治体病院
社会的責任を感じていなかった
企業の社会的責任 CSR 流行
企業が問われるのであれば、税を投入される公務員は感じて当たり前!
次の世代を考えなければ
…尻拭いだけしてきた14年間 50億円やっと返した
今、徳島
80億の赤字
人件費比率70%
★経営の安定なくして良質な医療なし★
外圧・内圧 を防ぐ屋根(システム)がなければだめ
地上にちょっとだけ基礎工事(経営)がなければだめ
◆経済性と公共性のバランスを模索している自治体病院
→x軸でなくy軸の移動が重要 「自立・自律」
ただ、行政は、カネのことしか言わなくなってきている…
行政がビジョンださねば、ミッションなどもてるわけがない
◆個の最適化は、すべて、全体の最適化につながらなければならない
All for one, one for all
◆院長と首長の相互理解と相互信頼があれば、ぜったいよくなる!
◆改革を妨げる三つの壁
◆2(言わなくてもわかる)・6(言われればわかる)・2
大切なのは、上の2割
始めは、下の2割の声の大きさに巻き込まれて、だめになっていた
言えば分かる6割が飲み込まれていた
下の2割は、相手にしない
◆どうやってやる気をだしてもらえるか「モチベーション」
外因的:アメとムチ など
内因的:興味と情熱 など
ミッション・パッション・アクション
チャレンジ・クリエイション
40代以下が、成果主義を否定している!
豊かな土壌にのみ、成果は実る
シリコンバレーのタネまいたって、実が出るわけではない
みんなが鍬を手に、畑を耕すことが、大切
成果:「果物が成る」 時間を待て…
◆価値観x熱意x行動 = 一体感の醸成
◆医療は文化だ!
患者や住民とともに感動できる医療!
<質問>
カルテを作ってくれたベンチャー
最近、カネで哲学が薄くなってきた…
「やる・やらない」の議論はやらせなかった
「やる」ためにどうするのか議論した。みんなで一生懸命考えた
そっせんしてやって見せて背中みせて…
しかし、背中見せると職員は頼り切る
職員の自立自律を妨げる!
背中を見せるのをやめた3年
でも、あるかなくなるから、また背中見せて
を繰り返したら、だんだんだんだん文化が創れた
職員一人一人が自らの力をつけなければ、だめ
・腹心の部下
誰かに確認して始めたり、したのか
・今の院長は腹心だったのか
→「みんなで一緒に」だった
216床、300人の職員というちょうどいい規模だったからできた
・次いだ院長に最後に残した言葉は?
「市長にだまされるな」 500mはなれた病院のtop
「新築してくれ」
・地方の医師不足は問題だが
自分は感じたことなかった
「なんか勉強できる」ときてくれるようになった
が、徳島に来て、
臨床研修義務化が始まり、大学も人員が減ってしまったため、病院に医師が…
全国どこの病院も、突破口を持っていない
ただ、それ以上に、病院が努力して、勉強になるから、と思ってもらえる努力しないと
・OECDで比較すると、12万人の医師が足りていない(現在26万人)
国の制度、根幹を変えないと、難しい…
・忙しいから開業しよう と、勤務医が減っていく
勤務医の努力で支えられている日本医療
・平均年齢45歳の看護師 そのままだった?
今は、33歳。
先生がくるまえにやめたり、きてやめたり、負債を返済してやめたり、ITがはいって…
→二つの年齢ピーク
・カルテ開示 がんだったりすれば?
告知していないひとには、うまいことやる
・勤務医の声
・電子カルテ 必要?
時代の流れ
電子かなくしてこれからの医療はなし
ただし、手段と捕らえての「使いよう」
・医師不足
二通りのグループ
開業医:医者が増えてほしくない
…勤務医と利益が違う
勤務医:日常性に埋没している
・どうやってまけてもらったか
手作りでやった
安売りがきたら、全員参加で買い取った
コンピューターも、生ものだから、量販店でもっとも安いものを買わせた
職員勝負
ベンチャーとの兼ね合いは、社長と院長の交渉
決めたら、「それで行く」
院長勝負
・どうやってお金を持ってくるのか
銀行からカネをかりやすい自治体病院
入れたことによる付加価値
「うちは貧乏だけれど、いれた」
「一生懸命働かないと」
いじけた職員に胸を張らす劇的な効果があった!