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2007年12月06日

「医療への刑事介入が臨床研究を萎縮させている」「医療事故などに関する患者支援法案」

以下、虎ノ門の小松秀樹先生、東大の上昌広先生に転送してほしいといただいた文章を、はりつけます。よければぜひ一読を。

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1) 厚労省・与党試案の問題点
 11/30に自民党案が公表されました。医療現場の反対を受け、一見まもとに見
えますが、官僚に見事に骨抜きにされています。厚労省は「警察に届け出した
くない医療者の意向」を受けて、「厚労省内部に調査権・処分権限を併せ持
つ」第三者機関を作り、医療事故の届け出を義務化しようとしています。組織
は一旦できてしまうと「内部の論理」で動きますから、粛々と行政処分・重過
失・故意の事例を警察に送ると思います。
 ちなみに、大野病院事件、およびその後の厚労省検討会での「厳罰化」が、
既に医学分野の研究に影響している当方の研究成果をお知らせいたします。
下記PDFファイルをご覧ください。

「医療への刑事介入が臨床研究を萎縮させている」
http://flesh.umin.jp/temp/0712ishuku.pdf
「医療事故などに関する患者支援法案」
http://flesh.umin.jp/temp/0712shien.jpg

2) 小松秀樹先生 「日本医師会の大罪」 
http://mric.tanaka.md/2007/11/17/_vol_54.html#more
 11月17日(土)に長崎市で行われた九州医師会で、小松秀樹先生が特別講演を
された内容です。唐澤日本医師会会長、日本医師会理事、九州圏内全ての県医
師会長を前にして、日本医師会執行部へ批判と、現場の医師が立ち上がること
を訴え、講演後、大きな拍手が沸き起こったそうです。この件は、いくつかの
メディアでも紹介され、日本医師会内部からも賛同が出ています(諫早医師会
理事 満岡氏 「勤務医を守れ」 
http://mric.tanaka.md/2007/12/02/vol_57.html#more)

3) ソネットエムスリー: 混迷する"医療事故調"の行方 
http://www.m3.com/tools/IryoIshin/index.html?pageFrom=m3.com
 橋本佳子編集長が丁寧に解説しています。会員登録をしないとみることがで
きませんが、是非、お奨めです。

4) 日経メディカルオンライン:小松秀樹が語る「日本医師会の大罪」
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/series/kikou/200711/504813.html

5) 厚労省の「試案」が通れば医療完全崩壊ーまとめサイト
http://ameblo.jp/kempou38/entry-10057470455.html
 このHPに掲載されている議員へのメールの仕方をみて、多くの医療関係者が
地元選出議員に直接メールしました。11/30の自民党部会にもっとも影響した因
子であり、インターネットの登場が医療界のガバナンスを代えつつあります。

(以下、小池個人の意見)
今の医療過誤訴訟はつくづく、「魔女狩り」的だと感じます。
個人が不死になることはありえないし、100%成功する医療もありえない。必ず病
院には不成功や診断不能という理不尽がつきまとう。理不尽に巻き込まれれば、
悲しければ、誰かを恨むことで自己を保る傾向が人間にはあり、そのため医療者
への恨みが社会から完全に消えることはおそらくはない。その恨みを、罰するこ
とで対処しようというのは計画を練っているひとたちの底の浅さを感じます。

今の日本医療をみていると、中世ヨーロッパの暗黒時代を連想してしまいます。
人が自然に逆らえることが今よりはるかに少なかった時代、様々な理不尽が人間
を打ちのめしていました。そしてヨーロッパは、特殊な能力を持って社会に貢献
していた人々を、「魔女」として生贄にし、血なまぐさく目先の感情を表面的に
ごまかしていた。でもその対処は表面的で、結局は特殊能力を失うことで社会の
力は失われていった。

今の日本医療は、それと同じに感じます。