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「扶氏医戒之略」

今日も一日、世間が休日だからこその(汗)救急外来をやっていて、先ほど家に
帰ってきた小池宙です。ひさびさに気晴らしの文章を書いてみます。

日々に精一杯になっていると、ついつい、医療ってなんだったのか忘れてしまう
という感覚を、自分は持つことがあります。
そこでふと、今日は「扶氏医戒之略」を引っ張り出して読んでみました。
http://web.kyoto-inet.or.jp/people/mekata-h/ikainoryaku.html

これは緒方洪庵が、扶氏(フーフェランド、ベルリン大学教授、1764-1836)が
書いた医者としての戒めを、12か条に門人に向けてまとめたものです。
ときどきこういった文章を眺めると、自分は落ち着きます。


…でも、思うのです。一行目の、

「人の為に生活して己の為に生活せざるを医業の本体とす。
安逸を思わず名利を顧みず唯おのれをすてて人を救わんことを希ふべし。
人の生命を保全し人の疾病を複冶し人の患苦を寛解するの外他事あるもの
にあらず」

の中の

『己の為に生活せざるを医業の本体とす』

だけを切り取って医療者に要求されることをしばしば感じます。
人間としてこんな生活がしたい、と医療者が要求するのは、職業人としての意識
が低い、ようなプレッシャーを感じることがあるのです。例えば、「病院から離
れて開業するなんてけしからん!」と勝手なマスコミが主張することはよくある
と思います。

医療者たちが人間として趣味を楽しんだり、家庭を持ったりすることは、医療を
回す上で医療の消費者たちには非効率的なことなのでしょうけれど、でもそれが
なければ医療者は燃え尽きる。医療ができる医療者たちの精神を再生産できなけ
れば、医療は再生産できず、運営できなくなる。
太平洋戦争の日本軍がごとく、そこで働く人間の再生産の必要性を無視して、精
神論で押し切ろうという戦略性の無さと、押し切れるという読みの浅さが、今の
日本の「医療崩壊」「立ち去り型サボタージュ」につながっているんだよなぁ、
と感じたりします。


医療の本質って、人間の再生産、だと自分は思うのです。
それは、そこで働き生きる人たちの再生産も含んでいると、自分は思います。

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