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第11回信州脳神経漢方研究会抄録

昨日頼まれて、第11回信州脳神経漢方研究会というところでちょっとプレゼンをしてきた。抄録をアップしてみます

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腎虚と考えられる症状あり漢方治療にて軽快した2症例

 手術や仕事といったストレスは、全身衰弱、抑うつ、思考力低下、めまいといったさまざまな症状の誘引となる。従来の治療方法では、休息と、多くの場合不十分な対症療法のほかには治療方法はない。対して漢方治療は消耗を補う治療を得意としている。今回、ストレスからの症状に対し、腎虚進行と判断し漢方治療を行ったところ奏功した2例を報告する。
 症例1は80代男性。胃癌に対するESD術後2ヵ月間継続する認知力低下を主訴に来院。HDS-R 21/30(短期記憶低下)。以前から冷え性と夜間頻尿、難聴、腰痛あり。腎陽虚と判断し八味地黄丸(TJ-7)5.0g分2処方。1ヶ月で全身倦怠感軽減、2ヶ月で認知能力回復した。
 症例2は50代男性。10年前より難聴傾向あり。近年仕事が忙しく、ストレスも多く消耗していた。スポーツを趣味としており活動的で冷えはない。腎陰虚と判断し六味丸(TJ-87)2.5g分1内服開始。2週間後、全身倦怠感軽減。3週間後、頭髪のはりを自覚。希望あり以後内服継続している。
 東洋医学的に腎は先天の気を貯蔵しており、骨、耳、髪、思考力等の機能を司る。腎は加齢とともに消耗し、それらの臓器の機能も加齢とともに低下する。六味丸、八味地黄丸、牛車腎気丸等の補腎の漢方薬はそれらの機能を回復させる。今回の2症例はともに加齢による腎虚をストレスが促進させ出現した症状であったため、腎機能を補う治療により症状が改善した。これらの症例のように、仕事や手術といったストレスを誘引とした中高年男性の不定愁訴は頻度も高く、治療薬としての補腎の漢方薬の適応は従来考えられているものより広い可能性がある。

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